クロノス・グループ、Vulkan 1.1を発表

改善されたデベロッパ・ツール、広範にわたる業界での採用、進化した機能性能に対応する新仕様と共に成長するVulkanエコシステムの勢いは継続

業界を代表するハードウェア/ソフトウェア企業から構成される、オープン・コンソーシアムのクロノス・グループは(以下、クロノス)は、Vulkan® 1.1 ならびにSPIR-V 1.3を公開したと発表しました。Vulkan 1.1は、バージョン1.0の広範にわたるエクステンションを統合しながら、サブグループ・オペレーション(Subgroup Operation)といったデベロッパから要求された機能を追加した、Vuklanのコア機能を拡張しています。また、クロノスは同時に、Vulkan 1.1の完全なコンフォーマンス・テストのオープンソースでの公開を行ったほか、AMD、Arm、Imagination、Intel Corporation、NVIDIA 及び Qualcommの各社がVulkan 1.1ドライバのコンフォーマンス・テスト認証に合格したことを発表しました。Vulkan 1.1並びに関連する認証テスト・ツールに関する詳細は、クロノスのVulkan Resource Pageをご参照ください。

Armのグラフィックス・リサーチ担当ディレクタでVulkanワーキング・グループ・チェアを務めるトム・オルソンは、今回の発表について次のようにコメントしています。「クロノスは、より拡張されたデベロッパ・ツール、厳格なコンフォーマンス・テスト、パブリックとなったVulkanエコシステムによって、完全かつ魅力にあふれたVulkanエコシステムを開発するという目標に取り組んでいます。Vulkan 1.1は、より優先度の高い産業界の要求に応え、デベロッパのニーズに配慮した機能ロードマップの提供を約束するものです」

Vulkan 1.1は、GPUアクセラレーション上の明確なコントロールを行う、新世代かつクロスプラットフォーム標準に対する、業界の勢いをより加速させるものです。Vulkanは現在、Windows 7、8.X、10、Android 7.0+、Linuxをはじめ、先日発表したVulkan 1.0アプリケーションをmacOS and iOSにポーティング可能とするオープンソース・ツールを含む、ほとんどすべてのGPU対応プラットフォームをサポートしています。Vulkanは、Unreal、Unity、Source 2 from Valve、id Tech、CroTeam’s Serious Engine、CryEngine、Xenkoといった、業界をリードする多くのゲームエンジンがサポートしているほか、Doom, Quake, Roblox, The Talos Principle, Dota 2をはじめ、Wolfenstein II やDoom VFRといった、AAAタイトルで独占的に使用されるAPIとして、広範なデスクトップ/モバイル・プラットフォームで動作する、30以上の最先端ゲームに使用されています。

Vulkan 1.1の新機能には、GPU上で平行して動作する複数タスク間のデータを極めて効率よくシェアし、マニピュレーション可能とする、「サブグループ・オペレーション」が含まれます。また、Vulkan 1.1には、安全なプレイパックや保護されたマルチメディア・コンテンツの表示といった、アクセスまたコピーできないリソースを使用しながらのレンダリングや表示オペレーションをするためのアプリケーションを可能とします。

さらに、広範囲に及ぶVulkan 1.0エクステンションが統合されることで、複数のイメージ・ビューの同時レンダリング、単一システム内での複数GPUの使用、バーチャル・リアリティ(VR)といった要求の厳しいアプリケーションで使用される、先進レンダリング及び機能向けクロス・プロセスAPIインターオペラビリティを含む機能を、Vulkan 1.1にもたらします。これらの中心的な機能には、16ビットメモリ・アクセス対応先進コンピュート、HLSLメモリ・レイアウト、多くのビデオ・コーデックで制作されるYCbCrカラー・フォーマット・テクスチャを通した、ビデオ・ストリームの表示・プロセス・コンポジット・サポートが含まれます。

クロノスはVulkan 1.1と共に、サブグループ・オペレーションをサポートし、拡張されたコンパイラ最適化を可能とするVulkanシェーダ中間表現機能を拡大する、新SPIR-V 1.3を発表しました。SPIR-Vツール・エコシステムは、GLSL及びHLSL双方のフロントエンド・コンパイラと共に、オープンソースであるSPIRV-Tools projectからのローレベル・ツール・サポートを拡大します。

Googleのシェーダー・コンパイラ担当リーダーで、SPIRワーキング・グループ・チェアを務めるデヴィッド・ネトは、今回の発表について、次のようにコメントしています。「私たちは、デベロッパが取り組んだSPIR-V IRの進捗を大変うれしく思います。デベロッパは、彼らのゲームやアプリケーションを販売するために、自身が選ぶシェーダ言語やさまざまなオープンソース・コンパイラを使用しています。Vulkanツールとエコシステムは、急速に進化しています」

迅速なレイヤー開発を可能とするVulkan Layer Factory (VLF)や、実際の物理的なハードウェアを必要とせずに、対象となるデバイス機能をシミュレーションするDevice Simulation Layer、デベロッパに最善の学習と最も可能性の高いアプリケーション課題に導くAssistant Layerといった、Vulkan 1.1をサポートするためにアップグレードされたLunarG Vulkan SDK ならびにtools layersなど、オープンソースであるVulkan開発ツールは、Vulkanと共に進化し続けています。さらに、RenderDocフレーム・キャプチャやイントロスぺクション・デバッグ・ツールはクロノス会員企業の支援によって、Android上での完全なネイティブVulkanのサポートが可能となったほか、SPIR-VツールやSPIRV-Cross cross compilerによる高レベル言語を使用した、SPIR-Vディスアセンブリ・サポートが改善されました。RenderDocは、ネイティブ・ディスアセンブリや情報のプロファイリングをベンダ向けに公開および、現在Vulkan 1.1のコア部分を形成する外部メモリ機能をサポートするためにアップグレートされました。

Vulkanエコシステムの協力的な進化をより強固なものとするために、クロノスは情報や様ざまな機会を共有し、協力的なソリューションを調整するために、パブリックなVulkan Ecosystem Forumを開設しました。このフォーラムの目的は、デベロッパからのフィードバックに対応し、クロスファンクション的なディスカッションを育成し、ユーザ、ツール・デベロッパ及びAPIデザイナ間のエンゲージメントを築くことです。多くの皆さまがVulkan Ecosystem on GitHubで、会話に参加されることを希望しています。

Vulkan 1.1の業界サポートコメント

AMD ソフトウェア担当コーポレート・バイスプレジデン、Andrej Zdravkovic氏

「AMDはVulkan 1.1仕様の公開を大変喜んでいます。この新しい業界標準の発表は、強力な基盤を基づいており、デベロッパがAPIにアクセスしやすくすることで、その範囲を広げています。コンピューティングシェーダのサブグループアクセスなどといった新しいVulkan 1.1の機能は、コンソールライクな最適化を可能にし、デベロッパがこれまで以上にGPUをコントロールできるようにします。また、Vulkanは相互運用をサポートして他のAPIとの接続性を強化し、最終的にマルチGPUおよびVRシステムに対する業界最高クラスのサポートを可能にします。 AMDはこのAPIの大幅なアップグレードは、既存のVulkanコミュニティに受け入れられ、ユーザーベースを拡大し続けると考えています」

Codeplay Software CEO、Andrew Richards氏

「Vulkan 1.1の新機能が、Vulkanに大きな変革をもたらしています。特に、新しいサブグループ機能は、低消費電力、高性能のディープラーニング作業に大きな違いをもたらすでしょう」

Continental グラフィックシステム/3Dビジュアライゼーション担当主任エンジニア、Ulrich Kabatek博士「Continentalは、Vulkanによるグラフィックス技術の前進が可能となっていることをとてもうれしく思います。私たちは、Vulkanが提供する車載クラスタの拡張など、より統合された自動車システムやレイテンシクリティカルなアプリケーション向けの改善に感謝しています」

Imagination PowerVRマーケティング担当バイスプレジデント、Graham Deacon氏

「Vulkan APIの主要な貢献者として、ImaginationはVulkan 1.1のAPIの次の進化を喜んでいます。新仕様はGPUの並列性の活用や、保護されたコンテンツをサポートする新しい方法を提供し、VR CinemaのようなVulkanの高度なビデオ処理を可能にします。私たちは、既存のVulkan対応GPU IPすべてが、新1.1仕様をサポートするVulkanに準拠した最初のベンダーの一員です。新しいサブグループと保護されたコンテンツ機能は、多くの新しいコアで完全に利用可能です」

Intel Corporation オープンソーステクノロジーセンター担当バイスプレジデント兼副ゼネラルマネージャ、Imad Sousou氏

「インテルは、高性能グラフィックスのためのオープンソースドライバの進歩を約束しています。 Vulkan 1.1は最新の4世代のインテル®Core™プロセッサ上での認証を取得しており、バーチャルおよびミックス・リアリティのサポートをさらに発展させています」 

NVIDIA ソフトウェアエンジニアリンク担当シニア・バイスプレジデント、Dwight Diercks氏

「Vulkanは、デベロッパが幅広いプラットフォームでGPUを最大限に活用できるようにするために、NVIDIAのビジネスにとって不可欠です。 完全なサブグループ機能を備えた当社のVulkan 1.1ドライバは、Vulkan 1.1.の公開日からWindows、Linux、およびAndroidで使用できます。 私たちは、Vulkanがデベロッパや幅広い業界のニーズを満たすためにクロノス内で引き続きリーダーシップを発揮していきます」

Samsung Electronics グラフィックス担当バイスプレジデント、Kim Taeyong氏

「Vulkanは、多くのGalaxyデバイスで使用されているTencentによるHonor of Kingsのような偉大なタイトルが、モバイルでの機能を最大限に活用し、高品質のゲーム実現を可能としています。Vulkan 1.1はこれらに加えて、VRゲームやビデオの機能を追加し、モバイル製品やVRヘッドセットに臨場感あふれるコンテンツ提供を可能とするでしょう」

StreamHPC マネージングディレクタ、Vincent Hindriksen氏

「Vulkan 1.1とSPIR-V 1.3は、サブグループ、16ビットナンバー、制限付きのポインタ形式を追加しているため、計算をより良くサポートする、重要な一歩となりました。これらを、Vulkan向けに最近導入された移植性プロジェクトの強力な業界サポートに追加することで、より多くのタイプのコンピューティングカーネルをより多くのプラットフォームで実行できるようになります」

 UX3D ファウンダー、Norbert Nopper氏

「私たちのような非ゲームビジネスにおいても、Vulkan 1.1が成功の鍵を握っています。デフォルトで複数のGPUと同時レンダリングを利用することで、エンジンをさらに最適化することができますからです」

VeriSilicon エグゼクティブ・バイスプレジデント兼VeriSlicon IP部門ゼネラルマネージャ、Wei-Jin Dai氏

「VeriSiliconは、最新の業界標準の低レベルGPU API Vulkan 1.1を採用し、当社のOpenGL ES 3.1 / 3.2クラスのGPUでVulkan 1.1をサポートすることをお約束します。私たちは、Vulkan 1.1 APIの新機能、マルチGPUサポート、プレミアムコンテンツ保護、高度なコンピューティング機能などが、新世代のVulkanアプリケーションの大きな可能性を引き出せることを、大変うれしく思います。 特に、私たちはVulkan 1.1が自動車業界の顧客に対して、グラフィックスのサービス品質と高度に要求の高いセキュリティレベルと機能を細かく制御できるようになることに、大変注目しています」

詳細情報はこちらをご参照ください。

Vulkan(https://www.khronos.org/vulkan/

クロノスのすべてのオープンソース・プロジェクト(https://github.com/KhronosGroup

Khronos Group(クロノス・グループ)について

The Khronos Groupは、さまざまなプラットフォームやデバイス上で並列コンピューティング、グラフィックス、ビジョン、センサー・プロセッシング、ダイナミック・メディアのオーサリング及び高速化を可能とする、オープンな業界標準の仕様策定を行うコンソーシアムです。クロノスが仕様策定する業界標準にはVulkan®、OpenGL®、OpenGL® ES、OpenGL® SC、WebGL™、SPIR-V™、OpenCL™、SYCL™、OpenVX™、NNEF™、COLLADA™、OpenXR™、glTF™などがあります。クロノスの会員は各仕様の策定作業に参画し、一般公開前のさまざまな過程で仕様策定に関する投票を行うことができるほか、仕様のドラフトへのアーリーアクセスならびにコンフォーマンス・テストを通して、自身のプラットフォームやアプリケーション開発の期間短縮や機能強化に役立てることができます。詳細情報はWebサイトで公開されています(www.khronos.org/)。

 

 

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