クロノス・グループ、VR標準仕様策定イニシアティブの設立を発表

バーチャル・リアリティ向け共通API策定を業界に呼びかけ

業界を代表するハードウェア/ソフトウェア企業から構成される、オープン・コンソーシアムのクロノス・グループは、最新のバーチャル・リアリティ(VR)端末向けの、クロスベンダー対応かつロイヤルティフリーのオープンな仕様策定を目的とした、新たなイニシアティブ設立を発表し、同グループへの参加を呼びかけました。

VR市場の急成長によってプラットフォームの分断化が発生しており、VR用アプリケーションやエンジンは複数のVR実行環境へのポーティングとカスタマイズを余儀なくされ、またVR用センサーとディスプレイにも複数のドライバー・インターフェースを使った組み込みが必要となっています。この分断化によって、説得力のあるVR体験の普及が遅れているほか、複数のVR端末に対応しようとするデベロッパー側には新たなコスト負担が生じ、革新的なユーザー・インターフェースの採用が阻まれています。

Jon Peddie Research(JPR)社長のジョン・ペディ氏は、次のようにコメントいます。「クロノスは15年以上にわたり、先端的なグラフィックスAPIやシステムAPIの最前線で活躍してきました。クロノスは、その活動実績と業界全体に対する責任を踏まえて、新興VR市場に向けた新しいAPIや標準仕様の策定に乗り出しました。私は、クロノスの会員としてこの取り組みに参画する業界トップ企業各社を応援し、業界全体もこの思いに共感してくださると思います。」

新しい標準仕様の主な要素は、ヘッドセットやコントローラー等のオブジェクト・トラッキング用APIや、VR実行環境へのデバイス統合を簡素化するAPI等が含まれます。これにより、アプリケーションをクロノス規格に準拠する任意のVRシステムにポーティング可能となり、エンドユーザー体験の大幅な向上とコンテンツ選択肢が広がることとなり、VR市場のさらなる成長を加速するものと考えられます。

新しい標準仕様の定義範囲並びに、優先目標を定める最初の会議が行なわれたのち、詳細な提案や設計作業が急速で進むと考えています。関心をお持ちの企業はぜひクロノスの会員として、この開発プロセスに意見や投票という形でご参加くださるようご案内します。どの会員企業も、仕様策定作業に寄与することができます。今回の取り組みやクロノス入会に関する詳細は、www.khronos.org/vrでご紹介しています。

業界のコメント

AMD社ワールドワイドVR統括本部長、ダリル・サーテイン(Daryl Sartain)氏: 「バーチャル・リアリティ業界は、これまでに多くの注目と投資を集めており、仮想現実技術[の有用性]が認められたことを示しています。VRの継続的発展には標準規格が必要であり、AMDはクロノスの今回のオープン規格に対する取り組みを支持します。」

ARM社メディア・プロセシング・グループ、プロダクト・マーケティング担当副社長ジャクブ・ラミーク(Jakub Lamik)氏: 「バーチャル・リアリティは家庭や職場、さらにはエンターテイメントにおけるビジュアル・コンピューティングを変容させるほど、ユーザー体験における説得力を大幅に高めるものであり、グラフィックス業界の進化を押し進めるものです。この市場の成功と拡大は、業界標準によって加速され、クロノスはその分野のパイオニアとなるリーダー的団体です。当社はクロノスを全面的に支援します。」

Epic Games社の創設者、CEOのティム・スウィーニー(Tim Sweeney)氏: 「主流となっているプラットフォーム全般において、VRが今まさに急成長を遂げようとしている中、クロノスのこの新オープン仕様への取り組みは実に時機を得ていると言えます。Epic Gamesはこの取り組みに全面的に貢献し、その成果となるAPIを当社のUnreal Engineに取り込み、サポートする予定です。」

Google VRプロダクト・マネジメント・ディレクター、マイク・ジャザエリ(Mike Jazayeri)氏: 「デベロッパーが、より簡単に説得力あるクロスプラットフォーム体験を構築できるオープン仕様があれば、VRの魅力を誰もが享受できるようになります。当社も、同業他社と連携してこの取り組みに参加することを楽しみにしています。」

Immersive Technology Alliance理事、ニール・シュナイダー(Neil Schneider)氏: 「Immersive Technology Allianceのミッションは、バーチャル・リアリティや拡張現実(AR)、そして複合現実等のテクノロジーを長期的に育成することです。私たちは多面的アプローチによってこれを実現しようと取り組んでいますが、真にオープンな標準規格こそ、この市場の重要な要素です。当アライアンスは長年にわたってクロノスと連携してきており、今回の取り組みについても参加を待ち望んでいます。この活動を通じ、ITAやITA VR理事会内の市場構築への取り組み等とも連携し、業界全体の成功を推進したいと考えています。」

Intel社VR Center of Excellenceディレクター、キム・ポーリスター(Kim Pallister)氏: 「バーチャル・リアリティは、コンピューティングインターフェース革命の代表格です。クロノスのコントリビュータ会員との連携により、VR向けオープン規格の実現ならびにイノベーションを加速できることを楽しみにしています。」

LunarG社CEO、カレン・ガヴァム(Karen Ghavam)氏: 「バーチャル・リアリティ市場の急成長というこの時期にあって、VRの思想主導者たちはソリューションの構築と市場投入を模索する中、互いに競合するAPIの開発を行っています。VR向けのオープンな標準仕様を整備することで、VRのエコシステムを構成する各企業は、互換性を持ち、コミュニティがそのまま採用できるAPIの拡張機能や各種のツール、ドライバー、アプリケーションを効率的に開発できます。今回の取り組みについて、当社はクロノスを支持します。」

NVIDIA社バーチャル・リアリティ担当ゼネラルマネージャ、ジェイソン・ポール(Jason Paul)氏: 「業界の力がVR向けオープン規格に集結するのを目の当たりにし、胸の高鳴りを覚えます。NVIDIAは、VRの採用の広がりとクロスプラットフォーム型コンテンツを推進する新標準規格の構築に関し、クロノスに全面的に協力しています。」

Oculus VR社CTO、ジョン・カーマック(John Carmack)氏: 「クロノスが策定したオープンAPI各種は、これまでにも業界に多大な価値をもたらしており、無意味なベンダー間の互換性の欠落に対し、差異化とイノベーションの絶妙なバランスを保ってきました。バーチャル・リアリティの成熟が進み、必要な機能が実用面で明らかになるにつれ、各社の協力で開発されるオープン規格のAPIは、当然ながら重要なマイルストーンとなります。当社は率先してこの取り組みに貢献します。」

Open Gaming Alliance理事、ワンダ・メローニ(Wanda Meloni)氏: 「Open Gaming Alliance(OGA)の主眼はゲーム業界の支援です。今やゲームが仮想・拡張現実の最大市場となっている状況にあって、ゲームのデベロッパーや販売会社は、ゲーム開発に関する無数の基準を抱えています。標準規格のAPIがあれば、ゲームだけでなく、他の没入型エンターテイメントや体験のイノベーションも大幅に加速されることになります。OGAは今回の重要な取り組みに関し、クロノスと緊密に連携することを期待しています。」

Razer社OSVR事業統括、クリストファー・ミッチェル(Christopher Mitchell)氏: 「バーチャル・リアリティの成功は、大規模なハードウェア市場が、遊び重視やプロに近い消費者たちが分断化や互換性の欠落を心配せずに、自由にハードウェアを選択できる市場となるかに係っています。これがOSVRの設立当初からのビジョンであり、当社はクロノスの一員として、業界全体をからめたインターフェース標準化を推進することに、大きな喜びを感じています。」

Sensics社CEO、ユヴァル・ボーゲル(Yuval Boger)氏: 「たとえば、プリンターを買う際に、ワードプロセッサまでアップグレードする必要はありません。このように、VRやAR向けオープン規格があれば、ベンダーがどこであろうとも、ユーザーは自分に一番合う装置や周辺装置を選択する自由を得ることができますし、それらの装置がうまく連係することにもなります。私たちは、OSVRの設立やHMD構築の10年の歴史の中で、多くのことを学びました。この専門知識をクロノスのオープンAPIに対する取り組みに応用できることに、興奮しています。」

Tobii社プロダクツ&インテグレ―ション担当副社長、ヨハン・ヘルクイスト(Johan Hellqvist)氏: 「アイ・トラッキング市場のトップ企業として、当社はこれまでにVRを使った視標追跡技術の開発に膨大な投資を行なっており、クロノスにおける今回のVR標準化への取り組みを歓迎します。中心窩レンダリングと凝視のインタラクティブ性がVR体験の鍵であり、VRに注力するデベロッパー向けにAPIを標準化するクロノスの取り組みによって、コンテンツの増大とVRエコシステムの拡大が確かなものとなります。」

Valve社、ゲーブ・ニューウェル(Gabe Newell)氏: 「市場のVRシステムの台数は急増しています。これらのほとんどは、デベロッパーが別々のAPIで対応する必要があり、消費者から見ればとてつもない分断化が生じています。アプリケーションがさまざまなVRシステムをターゲットとできるよう、標準規格APIを構築するという今回のクロノスの取り組みは、この傾向を覆す重要な一歩となります。」

VeriSilicon社IP部門担当上席副社長兼統括本部長、ウェイジン・ダイ氏: 「VRは、高性能なGPUからマシン・ビジョン・プロセシング、あるいは先端的なディスプレイ・コントローラ技術に至るまで、現代のありとあらゆるピクセル生成パイプラインが複雑に絡み合うものです。これらのテクノロジーを提供する有力企業として、当社はクロノスが包括的なVR標準規格の構築を担うと決定したことを大変喜ばしく感じており、この取り組みを全面的に支持するつもりです。」

Khronos Groupについて

The Khronos Groupは、さまざまなプラットフォームやデバイス上で並列コンピューティング、グラフィックス、ビジョン、センサー・プロセッシング、ダイナミック・メディアのオーサリング及び高速化を可能とする、オープンな業界標準の仕様策定を行うコンソーシアムです。クロノスが仕様策定する業界標準にはVulkan™、OpenGL®、OpenGL® ES、OpenGL® SC、WebGL™、SPIR-V™、OpenCL™、SYCL™、OpenVX™、NNEF™、COLLADA™、glTF™などがあります。クロノスの会員は各仕様の策定作業に参画し、一般公開前のさまざまな過程で仕様策定に関する投票を行うことができるほか、仕様のドラフトへのアーリーアクセスならびにコンフォーマンス・テストを通して、自身のプラットフォームやアプリケーション開発の期間短縮や機能強化に役立てることができます。詳細情報はWebサイトで公開されています(www.khronos.org)。

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