クロノス・グループ、「glTF」の有能な進展を発表

オープンソースglTFバリデータとglTF 1.0.1公開、 IANAのglTF MIMEタイプ承認、複数のインポータとトランスレータを公開

業界を代表するハードウェア/ソフトウェア企業から構成されるオープン・コンソーシアムのクロノス・グループは、3Dコンテンツの送信及びローディング向けにロイヤリティで提供するglTF (GL Transmission Format)に関する重要な進展があったことを発表しました。クロノスは、2015年9月のglTF 1.0発表に続いてオープンソースglTFバリデータを公開し、業界からのインターオペラビリティ(相互運用性)強化に関するフィードバックを盛り込んだglTF 1.0.1仕様のコミュニティレビューを開始しました。また、IANAによるglTFのMIMEタイプとしての正式登録を受け、glTF規格をサポートする各種インポータやトランスレータ、ツール群の拡張を推進しています。glTFの仕様や関連活動の詳細は、クロノスのウェブサイトでご覧いただけます。

Oculus社のCTO、ジョン・カーマック氏は次のようにコメントしています。「世界は、画像、音声、動画、テキストの共通フォーマットに比肩する効率的で使いやすい3Dシーンの標準規格を長い間待ち望んでいました。オーサリング用のフォーマットではなく、必ずしも高度に最適化されたプラットフォーム依存アプリケーション用のフォーマットでもなく、インターネットとの親和性があり、さまざまなアプリケーションで直接生成及びインポートできるツールを必要としていした」

glTFはベンダーやランタイム環境に依存せず、3Dシーンおよび3Dモデルのサイズを最小化するアセット配布用フォーマットであり、WebGL™等のAPIを使ったインタラクティブ3Dアプリケーションによるランタイム処理を最適化します。glTFからは、画像におけるJPEGと同様、3Dコンテンツのツールやサービス用の共通出力フォーマットが生成されます。 フォーマットはパースが容易なJSONシーンとマテリアル記述を組み合わせたもので、バイナリジオメトリ、テクスチャ、マテリアル、アニメーションをリファレンス先としています。glTFは多様なユースケースが扱えるように拡張性を持たせてあり、すでにリリース済みの拡張セットとしては、地理空間アプリケーション向けのバイナリシーン記述や高精度レンダリング等があります。

glTF 1.0.1は、アセットのバリデーションに役立ち、堅牢かつ相互運用が可能なエコシステムが促進されるよう、仕様の特異性を絞り込んでいます。変更点としては、アクセサ、バッファー、テクニック、その他のglTFプロパティのコーナーケースに関するマイナーアップデートが含まれます。リリースされたドラフト版はコミュニティレビュー用であり、実装と業界フィードバックを済ませたのちに本番となります。glTF 1.0.1の詳細とディスカッション内容については、GitHub内のglTF 1.0.1ディスカッションプロジェクトページをご覧ください。

NVIDIA社のバイスプレジデント兼クロノス・グループのプレジデントを務め、Khronos 3D Formatsワーキンググループチェアを兼務するニール・トレべットは、次のようにコメントしています。「glTFは、3Dアセットを高速かつ効率的に多様なプラットフォームやデバイスに取り込みたいという、かつ増え続けているニーズを満たすものとして、これまでも業界から受け入れられてきました。拡張現実(AR)や仮想現実(VR)といった急成長を遂げている領域では、広く受け入れらている3Dフォーマットを基盤として活用することで、シームレスなコンテンツ配信やエンドユーザー体験が実現されることになるでしょ。」

新glTFバリデータは、glTF 1.0.1のアセットを仕様とスケマに沿って有効かどうかを解析し、有効でなければ何が原因かを教えてくれる、オープンソースのクロスプラットフォーム型ツールです。すべてのglTFアセットの構築が正しくできているかの検証に使えるため、ツールとアプリケーション間のインターオペラビリティには決定的に重要となります。glTFバリデータは、現時点ではコマンドラインおよびドラッグアンドドロップ型バリデータのウェブフロントエンド用ツールとしてリリースされており、クライアントサイドのJavaScriptライブラリも近々にリリースする予定です。ソースコードと詳細情報については、GitHub内のglTF バリデータページで公開されています。

「MIMEタイプ」はファイルに含まれる情報種別の特定に使われます。クロノスがglTFをMIMEタイプとしてInternet Assigned Numbers Authority(IANA、アイアナ)による正式登録を受けたことは、glTFファイルが多様な市場やエコシステム全体を通じて信頼性の高い正式なファイルとして判定・認識されることを担保する、意義深い前進です。これまでに正式登録されているMIMEタイプには、画像のjpeg、音声のmpeg、動画のmp4があります。最新モデルのMIMEタイプであるgltf+jsonにより、3Dはようやく幅広く活用可能なコンテンツクラスとして認識されます。

glTFの仕様は、GitHubよりすでに無償で入手できる複数のコンバータおよびローダの仕様・ソースを使い、オープン形式での開発が続いています。glTFのリリース以降、以下の通り業界のサポート環境も広がりを見せています。

  • ブレンダ等のツールによるダイレクトエクスポート
  • FBX、COLLADA、OBJ、OpenStreetMap等、多様なフォーマットに対応したトランスレータ各種
  • Open Asset Import Library(Assimp)でのサポート
  • three.js、MicrosoftのBabylon.js、Cesium、X3DOM、xeoEngine、PEX、WebVR向けA-Frameフレームワーク等のエンジンへのダイレクトインポート
  • コミュニティ主導でマルコ・ハッターが開発したglTF Reference Card
  • GitHubのglTFツール関連プロジェクトページにはさらに詳しい情報があります。

glTFは、その機能強化や機能拡張の取り組みがすでに始まっています。開発中の拡張機能にはFraunhofer IGDの超大規模3D CADモデルの高機能ストリーミングや、MPEGコンソーシアムの3DGCテクノロジを用いた3Dメッシュ圧縮などが含まれています。また、今後可能性のあるコアスペック機能としては、PBR物理ベースレンダリングを施したマテリアルやモーフィングターゲットの定義、リリースを控えているWebGL 2.0規格のサポートなどがあります。GitHubのglTFプロジェクトページでは、どなたでもこれに関するディスカッションに参加できます。

仮想現実(VR)のパイオニアであり、glTF仕様の共同編集者であるトニー・パリシ氏は次のようにコメントしています。「glTFは、3Dグラフィックスの共有のためのオープンでインターオペラビリティを持たせた設計に、長年に亘って取り組んできた努力の賜物です。最初の承認からの数か月間ですでに見られたコミュニティの取り組みや業界における採用決定の数々は、場所を問わずに3Dを共有できるオープンフォーマットの将来が極めて有望であることを示していました」

Web3DSIGGRAPHカンファレンス(カリフォルニア州アナハイム、722日から28日)におけるglTF
カリフォルニア州アナハイムにて7月22日から28日にWeb3DおよびSIGGRAPHが併催されるカンファレンスでは、WebGL、glTFをはじめとしたクロノスのAPI各種に関する講演やデモが実施されます。

glTFに対する業界サポート
Adobe社シニア・プリンシパル・サイエンティスト、ステファノ・コラッツァ氏
「glTFのおかげでOpenGLを使った閲覧および加工用ツールに標準規格とウェブポータビリティが追加され、より深いデジタル体験がこれまでよりはるかに簡単に共有できるものとなります」

Augmented Reality for Enterprise Alliance(AREA)エグゼクティブディレクター、マーク・セージ氏
 「AREAからは、glTFの立ち上げに対し、クロノスに祝辞を述べたいと思います。glTFのさまざまな進展と業界の受け入れ拡大は、エンタープライズ向けエコシステムにおけるARの発展と3D業界の裾野の広がりに、さらなる意義深い前進をもたらすものです」

Box社プラットフォーム担当、ロス・マケグニー氏
「3Dコンテンツが、ライセンスを要するデスクトップ用アプリケーションから、クラウド環境に向けて開放されることで、コラボレーションのビッグチャンスが生まれます。デザイナたちは開発プロセスの早い段階で作品を共有でき、メーカ各社は開発したオブジェクトの姿をプリントする前に公開できます。また、教育関係者たちは開発した教育研修プログラムにインタラクティブな要素を組み込むことができます。これらは、glTFによる恩恵のほんの一例にすぎません。未来はすぐそこに迫っていると、肌で感じます。ハードウェアはすでに整っており、ブラウザも対応できています。あとはコンテンツのパイプライン課題を解決できさえすればよいのです。メーカやエンジン開発者たちが扱うツールに向けてインターオペラビリティを実現した標準規格が生まれたことは、極めて大きな前進です」

Cesium社プリンシパル・グラフィックス・アーキテクト、パトリック・コッツィ氏
「glTFは、各種のスマートシティ向けアプリケーションからフライトシミュレータに至るまで、ウェブ上での3D地理空間表示の基盤技術に成長しました。また、 巨大容量モデルのストリーミングに関しては、3Dタイルマップのコアコンポーネントとなっています」

Fraunhofer IGD Visual Computing System Technologiesのコンピテンスセンター長、ヨハネス・ベア氏
「最新のグラフィックスカードの演算性能と近似精度の向上により、PBR物理ベースレンダリングがリアルタイム・グラフィックスの熱狂的トレンドとなっています。これを受け、Fraunhofer IGDの研究者はglTFを用いて、この新たなトレンドをウェブに持ち込もうとしています。PBRの主たる目的は、現実の物理法則に従うことで、マテリアル各種があらゆる光源条件においても膨大なパラメータリストや設定条件を変更することなく、高精度かつ一貫性を維持して表示できるようにすることです。glTFはこの新種のウェブ技術を搭載するためのコンテナの役割を果たします。」

Microsoft社プリンシパル・プログラム・マネージャーでbabylon.jsの著者、デビッド・カチューヒ氏
「babylon.jsのコミュニティにも、glTFの大潮流が来ています。ユーザーニーズに確実に応えるため、われわれのglTFローダの継続的改善の手を止めていないのはこれがあるからです」

OTOY社創設者兼CEO、ジュール・ウルバッハ氏
「われわれOTOYは、JPEGが画像の世界でそうであったように、glTFがコンパクトで効率的な3Dメッシュ送受信の業界標準になると確信しています。それに向け、glTFはオープンシェーダー言語とともにORBXシーン交換フォーマットのコアコンポーネントとなり、当社のOctaneRenderを用いた24種以上のコンテンツ作成ツールやゲームエンジンで完全対応することになるでしょう」

Khronos Groupについて
The Khronos Groupは、さまざまなプラットフォームやデバイス上で並列コンピューティング、グラフィックス、ビジョン、センサー・プロセッシング、ダイナミック・メディアのオーサリング及び高速化を可能とする、オープンな業界標準の仕様策定を行うコンソーシアムです。クロノスが仕様策定する業界標準にはVulkan™, OpenGL®, OpenGL® ES, WebGL™, OpenCL™, SPIR™, SPIR-V™, SYCL™, WebCL™, OpenVX™, EGL™, COLLADA™, glTF™があります。クロノスの会員は各仕様の策定作業に参画し、一般公開前のさまざまな過程で仕様策定に関する投票を行うことができるほか、仕様のドラフトへのアーリーアクセスならびにコンフォーマンス・テストを通して、自身のプラットフォームやアプリケーション開発の期間短縮や機能強化に役立てることができます。詳細情報はWebサイトで公開されています(www.khronos.org)。

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