クロノス・グループ、「OpenVX 1.1」を発表

(クロノス・グループ発表プレスリリースの抄訳)

プレスリリース

処理機能の拡張、データのアクセス・処理の柔軟性強化、コンフォーマンス・テスト完全版の完成、セーフティ・クリティカル仕様等を盛り込んだ開発

業界を代表するハードウェア/ソフトウェア企業から構成されるオープン・コンソーシアムのクロノス・グループ(以下: クロノス)は、コンピュータ・ビジョンのアプリケーションおよびライブラリのクロスプラットフォーム・アクセラレーション向けAPI「OpenVX 1.1」を発表しました。OpenVXは、顔・体・ジェスチャのトラッキングや高度な映像監視、自動運転支援システム、拡張現実、目視検査、ロボティクスなど、あらゆる用途に向けたコンピュータ・ビジョン・アルゴリズムの性能と消費電力の最適化を可能にします。OpenVX 1.0準拠の実装およびツールは、すでにAMD、Imagination、Intel、NVIDIA、Synopsis、VeriSiliconの各社から提供されています。OpenVX 1.1はこの流れを踏襲し、 「Computational Photography(コンピュータ・ビジョン、CG、写真技術を一体化した新時代のデジタル写真)」などの用途向けに新たな処理機能が追加され、データのアクセスと処理に対するアプリケーション側による制御が強化されています。オープンソース形式のOpenVX 1.1サンプル実装とコンフォーマンス・テスト完全版は、2016年上半期に公開する予定です。OpenVX仕様の詳細およびアダプター会員用プログラムは、www.khronos.org/openvxから入手いただけます。

Embedded Vision Alliance創設者のジェフ・ビール氏は、次のようにコメントしています。「コンピュータ・ビジョン搭載製品がますます増える中、OpenVXはデベロッパがより簡単に高性能・低消費電力のビジョン処理を活用できるように対応しました。これにより、デベロッパ今までのようにプロセッサのプロである必要がなくなるほか、デバイスやアプリケーションへの高度な視覚技術搭載の普及を支援します。」

/p>OpenVXとコンフォーマンス・テストは、ベンダー間の一貫性と信頼性が欠かせない本番システムへの搭載に最適です。また、OpenVXは拡張も容易であり、仕様中枢部への統合の前段階で、顧客ニーズ対応のためのノード設定が可能です。 OpenVX 1.1は、ビジョン処理機能およびOpenVX上のグラフィックス・フレームワークの範囲と柔軟性を、下記のように大幅に拡張したものとなっています。

Computational Photography用途に対応するラプラシアンピラミッドの定義と処理

(1)任意パターンも可能なMedian、Erode、Dilateの各イメージフィルタ (2)簡素かつエラーを減らすOpenVXオブジェクトへのデータリード・ライト方法 (3)Target機能により、ヘテロジニアス実装デバイスのどのノードでアクセラレータを実行するかを制御 (4)ユーザ側のカーネルを用いたOpenVX拡張用に、今までより使い勝手が良く柔軟性の高いAPIを用意 (5)これら以外にもインフラ機能とビジョンノードを数々改善・明確化

Itseez社のプレジデントで、OpenVXワーキング・グループのチェアを務めるビクトール・エルキモフ氏は、次のようにコメントしています。「今回発表した新仕様は、コンピュータ・ビジョン・アルゴリズムを実行する組込みプラットフォームに、OpenVXを普及させるための重要な発表です。新たに加わったビジョン機能により、今までにない用途が実現し、インフラとつなぐAPIが洗練されたことで、デベロッパが高度なコンピュータ・ビジョン・アプリケーションを作成する際の柔軟性が広がります。」

OpenVX 1.1について
OpenVXは、OpenCL等の一般的な演算処理方式に比べ、ビジョン処理の実行とメモリモデルをより高位なレベルで抽象化したものです。アプリケーション開発のための一貫性のあるビジョン・アクセラレーションAPIと、性能のポータビリティを損なうことなく、幅広いアーキテクチャへの実装の飛躍的な先進性と効率性を実現しました。OpenVXを使うデベロッパは、ビジョン各ノードのグラフィックスの接続について、CPU/GPU/DSPあるいは専用ハードウェアでの高速化、コンパイラの最適化、ノードのコアレス化、タイル実行による処理済み画像のローカルメモリ内部でのセクション維持等、実装者が幅広いテクニックを使って実行・最適化できます。こうしたアーキテクチャ上のアジリティにより、多様なシステムで実行される、ビジョン対応かつバッテリーに極度に左右されるウェアラブル端末ディスプレイといった、OpenVX対応アプリケーションの消費電力と性能の最適な調整が可能となります。

セーフティ・クリティカル規格の今後
先進運転支援システム(ADAS)や自動運転車、医療やプロセス制御用アプリケーションなど、新たに創出される多くのセーフティ・クリティカルの市場機会において、ビジョン処理はより必須な要素と考えられます。クロノスのOpenVXワーキング・グループは、高信頼性が求められるこれらの市場の独特で厳しい要件に対応するため、OpenVXのセーフティ・クリティカル版も開発しています。また、Safety Criticalワーキング・グループは、先進的グラフィックスのプログラマブル・シェーダ・エンジンを、高い信頼性で使うためのOpenGL SC 2.0搭載実績をさらに高めるのみならず、セーフティ・クリティカル・システムに向けたオープン技術開発を支援するため、クロスAPIガイドラインの策定にも取り組んでいます。関心をお持ちの企業はぜひクロノスに参画いただき、一連の開発プロセスに意見や投票という形で参加してください。

OpenVX 1.1に対する業界サポート
AMD社Radeon Technologies Groupで上席副社長兼チーフアーキテクトを務めるラジャ・コーデュリ氏
「AMDはOpenVXをオープン・リソースとしてリリースし、全面的に対応しています。当社は、コンピュータ・ビジョンのデベロッパが組込みAPUからハイエンドのワークステーションGPUに至るまで、すべてのPCプラットフォーム上でOpenVXを活用できるようにしていますし、完全なオープンソースとすることで、AMD GCNアーキテクチャを使った他のプラットフォームにもOpenVXをデベロッパが簡単にポーティングできるようにしています。」

Imagination Technologies社で事業開発ディレクタを務めるクリス・ロングスタッフ氏:
「OpenVXは、ビジョン・アプリケーションの作成と採用を加速する重要な起点となり、自動車やFA(ファクトリー・オートメーション)等のセーフティ・クリティカル領域でのビジョン・アプリケーションへのアクセスが、今までよりも簡単になります。当社はPowerVR GPUおよびビジョン用IPのラインアップ全般でOpenVXに対応しており、OpenVX SCの仕様開発や『計算知能型ニューラルネットワーク』等の重要な新機能の搭載にも対応しています。これらのプロセッサはすでにモバイル、車載、組込み系各デバイスの多くで心臓部として使われており、ビジョン・アプリケーションの開発に最適なプラットフォームを提供しています。」

Mobica社でCTOを務めるジム・キャロル氏
「ビジョン処理は、さまざまな実用アプリケーションにおいてその重要性が増しています。これは先進運転支援システムやジェスチャ認識にとって、ユーザとのインタラクションを司る基盤技術です。当社は、こうしたアプリケーションの開発とOpenVX 1.1の高速化技術の実現に積極的に取り組んでいます。それが、次世代演算デバイスの多くの側面で基盤技術になると考えているからです。」

NVIDIA社でTegra担当副社長兼ゼネラル・マネージャを務めるディープー・タッラ氏

「OpenVXは、Jetson組込みプラットフォーム上のVisionWorks SDKの重要コンポーネントのひとつです。VisionWorksを使うことで、デベロッパは開発するアプリケーションに効率の高いGPUベースのビジョン・アクセラレーションを短期間で設定することができます。」

VeriSilicon社でVision Image Products担当副社長を務めるシャンハン・リン氏 「OpenVX規格を早くから取り入れてきた企業の一社として、クロノスが今回大きなマイルストーンを達成されたことを歓迎します。お客様は、当社のVIP(Vision Image Processor)ラインアップのOpenVX準拠ソリューションを積極的に採用しており、車載、映像監視、IoTの各用途に向けた半導体製品に組み込んでいます。OpenVXによって、ナチュラルUIやオールウェイズ・オン型カメラ、運転支援システムといったコンピュータ・ビジョン・アプリケーションのマスマーケットでの採用が加速しています。OpenVX 1.1は、ビジョン処理とComputational Photographyにさらに柔軟に対応するための大きな一歩です。当社のVIP製品がOpenVX規格に対応することで、モバイル、ホーム、車載、組込みの各種プラットフォームでの画期的なビジョン処理用途に向け、電力・性能・面積が最適化されたアーキテクチャとなったことを誇りに感じています。」

Khronos Groupについて
The Khronos Groupは、さまざまなプラットフォームやデバイス上で並列コンピューティング、グラフィックス、ビジョン、センサー・プロセッシング、ダイナミック・メディアのオーサリング及び高速化を可能とする、オープンな業界標準の仕様策定を行うコンソーシアムです。クロノスが仕様策定する業界標準にはVulkan, OpenGL, OpenGL ES, WebGL, OpenCL, SPIR, SPIR-V, SYCL, WebCL, OpenVX, EGL, COLLADA, glTFがあります。クロノスの会員は各仕様の策定作業に参画し、一般公開前のさまざまな過程で仕様策定に関する投票を行うことができるほか、仕様のドラフトへのアーリーアクセスならびにコンフォーマンス・テストを通して、自身のプラットフォームやアプリケーション開発の期間短縮や機能強化に役立てることができます。詳細情報はWebサイトで公開されています(www.khronos.org)。

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