クロノス・グループ、Vulkan 1.0を発表

クロノス・グループ、Vulkan 1.0を発表
ハードウェア・ドライバ並びにデベロッパSDKが発表と同時に使用可能

業界を代表するハードウェア/ソフトウェア企業から構成されるオープン・コンソーシアムのクロノス・グループは、新API「Vulkan 1.0」を発表しました。Vulkan 1.0は、クロノスのWebサイトで発表と同時に無償でダウンロード入手可能です。Vulkanは、PC及びコンソールから携帯電話、組込みプラットフォームに至る広範囲な製品で使用されているGPU上で、高効率かつクロス・プラットフォーム対応のグラフィックス並びにコンピュート環境を提供します。ゼロから仕様策定作業が行なわれ、OpenGLやOpenGL ES 3D APIを補完する位置づけとなるVulkanは、CPUオーバーヘッドの最小化と効果的なマルチ・スレッド性能を実現しながら、性能と予測可能性の最大化のために、GPUアクセラレータ上でアプリケーションの直接コントロールを可能とします。Vulkan 1.0ハードウェア・ドライバとSDKは発表と同時に提供され、デベロッパはVulkan対応アプリケーションとエンジン開発を直ちに開始することができます。Vulkanに関する詳細情報は、クロノスのWebサイト(https://www.khronos.org/vulkan/)をご参照ください。

Vulkan 1.0について
Vulkanはハードウェア、ゲーム・エンジン並びにプラットフォーム・ベンダを含む、業界を代表するクロノス会員企業各社の多大な貢献のもとで、18ヵ月に及ぶ共同作業の結果誕生しました。Vulkanは、Windows 7から10までのMicrosoft Windowsに対応すると共に、Linux、SteamOS、Tizen及びAndroidを含むプラットフォームで、ネイティブなレンダリングとコンピュートを行なうことができます。

クロノスはVulkanコンフォーマンス・テストをはじめ、仕様ソース、多様なソフトウェア・ツールを含むVulkanに関連するオープンソースを提供することで、APIの継続性を支援すると共に、エコシステムに革新をもたらすため、より有力なコミュニティのプログラム参加を可能としています。クロノスのすべてのオープン・ソース・プロジェクトは、Webサイトで公開されています(https://github.com/KhronosGroup)。

Vulkanは、最適なグラフィックスやコンピュート性能のオーバーヘッドを最小限にし、洗練されたゲーム・エンジンや、ミドルウェア及びアプリケーションが要求する、直接的なGPU管理を提供します。シンプルで予測可能なドライバは、広範囲にわたるインプリメンテーションにおいて、性能及び機能の軽便性を提供します。OpenGLに対するVulkanの優位性として、多数のCPUコアを平行して使用している中でのGPU動作の生成機能があります。特に、VulkanはゲームやCAD、モバイル・アプリケーションといった、広範囲にわたるアプリケーションのボトルネックを取り除くため、CPU依存型のデベロッパに便利なAPIです。Vulkanは、多くのデベロッパがGPU機能にアクセスするための高レベルなアブストラクションを提供する、従来のOpenGLやOpenGL ES APIを補完します。クロノスは、市場の要求に対応するため、Vulkanと平行して、引き続きOpenGL並びにOpenGL ESの進化に取り組みます。

クロノスのプレジデントで、NVIDIAのバイス・プレジデントを務めるNeil Trevettは次のコメントを発表しています。「Vulkanのワーキング・グループは、今までの他のワーキング・グループ以上の情熱を持って、このプロジェクトに取り組んできました。その結果、開始から18ヵ月で仕様をはじめ、コンフォーマンス・テスト、オープンソースSDK並びにコンパイラ公開を成し遂げることができしました。Vulkanは、従来のAPIを置き換えるものではなく、デベロッパにもうひとつ他の新しい選択肢を提供するものです。Vulkanのマルチ・スレッドで明確なリソース管理は、次世代の洗練された高性能エンジン及びアプリケーションの実現に貢献します」

Vulkanは、シェーダやコンピュート・カーネル機能をネイティブにサポートする、クロノスが策定した中間表現「SPIR-V™」を使用します。SPIR-Vはコンパイラ・チェーンを分割し、高レベルの言語フロントエンドを、Vulkanで取り込まれた標準化された中間フォームに、プログラムの吐き出しを可能とします。ビルトインした高レベル言語ソース・コンパイラへのニーズの削除は、GPUドライバの複雑性を大幅に低減し、言語フロントエンドの多様性を実現します。さらに、標準化されたIRはシェーダIP保護、加速したシェーダ・ロード時間の測定を提供し、デベロッパに共通言語フロントエンドの使用を可能とし、より改善されたシェーダの信頼性や複数のインプリメンテーションへの軽便性を実現します。

Vulkanのレイヤーデザインは、生産性能への影響を与えることなく、開発におけるコード検証やデバッグ、プロファイリングのツール・レイヤーへのインストールするための共通で拡張可能なアーキテクチャを可能とします。クロノスのオープンソースは、SDKやツールがあらゆるプラットフォームで使用することを可能とします。

LunarGVulkan SDKについて
LunarGは、Vulkan 1.0と同時に公開されたWindows/Linux向けの最初のVulkan SDKです。このSDKには、正式なVulkan APIの使用保証や、プラットフォーム並びにグラフィックス・ハードウェア間の軽便性を改善するための検証レイヤーが含まれます。また、スクリーンショット撮影やAPIの活動状況トラッキング、稼働中の他のデバッグ・タスクを記録するためのレイヤー追加が可能です。LunarG SDKには、デベロッパのアプリケーション開発を支援するサンプル・プログラムやドキュメントが含まれます。Vulkan向けLunarG SDKはオープンソースであり、LunarXchangeから無償で提供されます(vulkan.lunarg.com)。

LunaG Inc.でCEOを務めるKaren Ghavam氏は次のコメントを発表しています。「Vulkanは、CPUのオーバーヘッドを最小化し、マルチ・スレッド性能をより効果的なものとするために、アプリケーションにGPUアクセラレーションを直接コントロール可能とするローレベルAPIです。SDKは、アプリケーション・デベロッパにローレベルAPIと共に開発のための最高のツールを提供します」

GDC 2016
クロノスは、GDC 2016会期中の3月16日(水)に、Vulkanをご紹介するセッションを、下記のとおり開催します。セッションでは、Vulkanワーキング・グループをはじめクロノス会員企業によるVulkan関連の発表や製品デモンストレーションが予定されています。開催詳細はクロノスWebサイトをご参照ください。

日時: 3月16日(水)、14:00~19:00
会場: Green Space(657 Mission Street Suite 200、サンフランシスコ)
https://www.khronos.org/news/events/gdc-2016-khronos-sessions

Vulkan 1.0発表に対する業界のコメント

「私たちは、Vulkan APIイニシアティブにおける業界の迅速な対応をとても喜んでいます。Vulkanのクロス・プラットフォーム対応と、高性能かつ健全なオープン・ソース・エコシステムは、ソフトウェア・デベロッパに一層迅速なアップデートを可能とし、固有のOSに限定されていた他のAPI採用を遥にしのぐことになると期待しています」(Gabe Newell, co-founder and managing director, Valve)

「Vulkanは大きな可能性を秘めています。私たちは何ができるかサーフェスのスクラッチだけを行なっていますが、Talos PrincipleのVulkanへのポーティングはこのコンセプトの証明となるでしょう。Vulkanの登場で、パフォーマンスと軽便性との終わりなき戦いは終わりを告げることになりました」(Dean Sekulic graphics engine specialist at CroTeam)

「Vulkan 1.0の発表は、デベロッパにとって大いなる前進です。Mantleから派生したVulkan APIは、低オーバーヘッドかつ高性能グラフィックスAPIの恩恵と、クロス・プラットフォームでクロス・ベンダーを対象とするアプリケーションに恩恵をもたらします。低オーバーヘッドAPI分野のパイオニアとして、AMDは今後もオープンかつスケーラブルな技術のプロモーションに注力し続けます。クロノス・グループの会員として、AMDはPCゲーム開発における次の進化を推進するために、Vulkan APIの開発にハードウェア・ソフトウェア業界の大手各社と共同作業に関わることを誇りに思います」(Raja Koduri,氏、Senior vice president and chief architect, Radeon Technologies Group, AMD)

「Vulkan 1.0によって、グラフィックス・アプリケーションのデザイナはGPUを効果的かつ柔軟に管理し、複数CPU並びにARM® big.LITTLE™を最大限活用することができます。デベロッパは、ユーザ体験を拡大したいのですが、その一方でモバイル機器のバッテリ寿命を維持しなければなりません。Vulkanは、より高度な効果手法でARM Mali™ベースのグラフィックス体験の提供を可能とすることで、この問題解決を支援します」(Tom Olson氏、Director of graphics research, ARM)

「Vulkanはクロス・プラットフォームの性能と管理を次レベルに進ませるでしょう。私たちは、オープンな業界標準策定に関わるクロノスを通して、VulkanをiOS及びOS Xに提供することを大変うれしく思います」(Bill Hollings, The Brenwill Workshop)

「私たちは、専門知識の貢献を通してVulkan仕様策定作業に深く関わっていることを大変うれしく思います。当社のチームは、業界がマシンのビジョン化、ビッグ・データ処理、モバイル・アプリケーションにおける飛躍的な技術開発を可能とするインプリメンテーションを提供するために、VulkanとSPIR-Vを使用して開発を推進します」(Andrew Richards, CEO of Codeplay)

「自動車向けのデジタル機器クラスタ及びインフォテイメント・システム・メーカとして、コンチネンタルはVulkanの正式発表をうれしく思います。Vulkanは当社のみならず、グラフィックス・コミュニティに大きな前進をもたらします。明確なAPIとして、Vulkanはコンチネンタル社にニーズに対応する、効果的でカスタムレベルの安全性を備えた、今まで以上に高品質のグラフィックス・システム開発を可能とします。当社は、Vulkanの正式発表の成功を祈ると共に、継続性を持ち安全かつ安定性があり、独立した、手ごろな将来のソリューション開発に活用することを楽しみにしています」(Dr.-Ing. Ulrich Kabatek, principal technical expert graphic systems & 3D visualization, Continental Automotive GmbH)

「Vulkanは、アプリケーション・デベロッパが長年待ち望んでいた、GPUアクセラレーションへのダイレクト・アクセスを提供する、グラフィックス業界における重要なでき事です。インテルはデベロッパやエンドユーザに、三世代にわたるIntelグラフィックス・プラットフォーム向けのドライバを提供することで、この新テクノロジーを支援することを誇りに思います」(Imad Sousou, vice president and general manager, Intel Open Source Technology Center)

「ImaginationはVulkanプロジェクトへの貢献と同時に、モバイル・プラットフォーム上で初のデモンストレーションを行なうことを大変うれしく思います。仕様の正式発表後、少しでも早くデベロッパに提供することが重要だと考え、私たちはNexus Player向けに直ちに使用可能な、PowerVR Series6 GPU.を用いたデベロッパイメージを提供しています。デベロッパは、当社のVulkanリソースを紹介するWebページ(https://imgtec.com/vulkan)で使用事例やチュートリアルを参照することができるほか、近い将来、当社のすべてのツールでVulkanサポートを受けることができます」(Peter McGuinness, director of multimedia technology marketing, Imagination Technologies)

「Linaroは、Vulkan 1.0仕様の策定作業におけるクロノス・グループの共同作業の成果を、すべてのモバイル・プラットフォームに関わる企業として、大変うれしく思います。システム・プロバイダやデベロッパがVulkanのグラフィックスにおける最先端機能を活用するようになることから推測すると、Vulkanは瞬く間に重要な基礎ツールとなるでしょう」(Tom Gall, director, Linaro mobile group tech lead, graphics, GPGPU)

「Mobicaは、Vulkanの発表に対してグラフィックス・コミュニティの一員としてうれしく思います。性能改善は、明白にエンドユーザに恩恵をもたらします。モバイル及びデスクトップ・プラットフォーム向けの統合されたAPIは、ソフトウェア開発プロセスも加速します。私たちは、クロノスと共にVulkan仕様策定に参加することをうれしく思うと共に、グラフィックス向けの次の重要な業界標準策的に貢献することを楽しみにしています」(Jim Carroll, CTO, Mobica)

「Vulkan APIによって、デベロッパは業界最高のNIVDIA GPU入手がより入手しやすくなり、私たちはこの仕様策定作業における貢献を誇りに思います。当社は、Vulkan発表と同時にWindows, Linux, Androidプラットフォーム向けのVulkanドライバ提供を始めました。今後とも、Vulkanが業界のニーズに対応するために進化することを保証するために、クロノスと共同作業を続けます」(Tony Tamasi, senior vice president of content and technology, NVIDIA)

「Starbreezeは、クロノスVulkanワーキング・グループが開発コミュニティに対して、Vulkan APIを提供することに感謝します。私たちは、Vulkan APIがPCゲーム業界に今後訪れる次世代グラフィックスの基礎作りに貢献すると確信しており、同業者と共にこのプロジェクトに参画することを誇りに思います」(Emmanuel Marquez, Starbreeze CTO)

「私たちはクロノスの新Vulkan APIの仕様策定に対する貢献をうれしく思います。Qualcomm Technologies, Inc.は、業界他者に先駆けてVulkanコンフォーマンス認定のドライバを提供し、Snapdragon 820の組込みグラフィックスのQualcomm Adreno 530 GPUと、Adreno 4xx series GPUに対応します。Vulkanは、マルチスレッド・コマンド・バッファ生成や、Adreno GPUでの先進グラフィックス機能の明白な管理を追加した次世代グラフィックス性能を可能とします。私たちは、アプリケーション・デベロッパがスマートフォン、タブレット、VR HMD、さらにはSnapdragonプロセッサを使用するさまざまなタイプの機器向けのグラフィックス/コンピュート・アプリケーションを開発するときに、この新APIの使用を支援するために、Snapdragon Profiler及びAdreno SDKを含むSnapdragonデベロッパ・ツールでVulkanをサポートすることを期待しています」(Micah Knapp, director of product management, Qualcomm Technologies, Inc.)

「Samsungは、プラットフォームに依存しないゲーム開発エコシステム拡張を支援する、Vulkanの発表を大変うれしく思います。私たちは高性能かつ最先端技術の開発を可能とする、オープン標準を支援するため、クロノスの活動に参加してきました。Vulkanは、モバイル・ゲームにより活き活きとした直感的なユーザ体験をもたらすでしょう」(Tae-Yong Kim, vice president, mobile communication business, Samsung Electronics)

「クロノスのプロモータ会員及びVulkanワーキング・グループの一員として、VeriSiliconは新しい業界標準ローレベルGPU APIのVulkan 1.0の発表を歓迎します。VeriSiliconは、広範囲にわたるVivante GPUへのVulkan 1.0サポートを提供します。私たちは、新APIが電力を消費するIoTクライアントから新クラスの低コストモバイル・コンピュート・ソリューショに至る、広範囲にわたる組込み機器での新世代アプリケーション向けに、新製品並びに従来GPU製品の性能ポテンシャルを飛躍的に改善することに大変喜んでいます。特に、私たちの極めて高いセキュリティレベル及び機能と、Vulkanインプリメンテーションによって得られるグラフィックス品質を、自動車業界の顧客に提供できることです」(Wei-Jin Dai, executive vice president of VeriSilicon’s IP Division)

Khronos Groupについて
The Khronos Groupは、さまざまなプラットフォームやデバイス上で並列コンピューティング、グラフィックス、ビジョン、センサー・プロセッシング、ダイナミック・メディアのオーサリング及び高速化を可能とする、オープンな業界標準の仕様策定を行うコンソーシアムです。クロノスが仕様策定する業界標準にはVulkan™, OpenGL®, OpenGL® ES, WebGL™, OpenCL™, SPIR™, SPIR-V™, SYCL™, WebCL™, OpenVX™, EGL™, COLLADA™, glTF™があります。クロノスの会員は各仕様の策定作業に参画し、一般公開前のさまざまな過程で仕様策定に関する投票を行うことができるほか、仕様のドラフトへのアーリーアクセスならびにコンフォーマンス・テストを通して、自身のプラットフォームやアプリケーション開発の期間短縮や機能強化に役立てることができます。詳細情報はWebサイトで公開されています(www.khronos.org)。

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