クロノス・グループ、SYCL 1.2.1コンフォーマンス・テストを公開

アドプター・プログラムによって、SYCLインプリメンテーション向けの包括的なテストが可能になり、SYCL仕様のメンテナンスの公開により、ランタイムの最適化が改善

業界を代表するハードウェア/ソフトウェア企業から構成される、オープン・コンソーシアムのクロノス・グループは(以下、クロノス)は、並列プログラミング向けのC++ベースのプログラミング・フレームワークである、SYCL™ アドプター・プログラムを公開したと発表しました。アドプター・プログラムの下で、SYCL 1.2.1のインプリメンターは豊富なコンフォーマンス・テストにアクセスできるほか、クロノスに評価用データのアップロードと、コンフォーマンス・テスト適合者としての認定を受けることが可能となりました。また、クロノスはSYCLアドプター・プログラムと共に、SYCL 1.2.1を更新し、拡張されたランタイムの最適化を可能とする仕様を、明確にしました。クロノス・アドプター・プログラムに関する詳細情報は、クロノスのアドプターページをご参照ください。

クロノスで、SYCLワーキング・グループのチェアを務めるマイケル・ウォン(Michael Wong)氏は、次のようにコメントしています。「OpenCLの発表から10年経過し、私たちは完全なコンフォーマンス・テストとアドプター・プログラムを擁する並列処理向けの高レベルC++言語を持つことができました。アドプター・パッケージは、インプリメンターにとって極めて重要なリソースであり、複数のSYCLインプリメンテーション間の一貫性を確実に支援します。私たちは、今後数ヶ月の間に、最初のSYCL 1.2.1コンフォーマント・インプリメンテーションが登場すると期待しています」

2017年12月に公開されたSYCL 1.2.1は、OpenCLの上位レイヤーに位置し、別々の3つのインプリメンテーションから得られる重要な経験と、オリジナルのCUDAアクセラレーター・バックエンドでもあるTensorFlowといった、機械学習フレームワークからのフィードバックを統合しています。SYCL 1.2.1はOpenCLデバイス上で加速できるように、C++14並びにC++17、ISO C++17並列STLプログラムを可能とする並列STLプログラムと共に、C++11の機能に位置付けられます。SYCLワーキング・グループはまた、要求のあったデベロッパー機能の提供と、拡張されたランタイムの最適化を可能とする、仕様の更新を発表しています。

クロノスで代表を務めるニール・トレベット(Neil Trevett)は、次のようにコメントしています。「クロノスのコンフォーマンス・テストは、複数のベンダーによるインプリメンテーション上で、継続性と信頼性を確実にすることで、クロノス標準の完全性を維持するために重要な役割を果たし続けます。SYCL 1.2.1向けの新アドプター・パッケージは、OpenCLベースのマルチ・ベンダー並列プログラミング並びに機械学習の加速化を支援するという、クロノスのミッションの継続を支援するものです。SYCLは、ヘテロジニアスな並列プログラミングを現代的なISO C++にもたらす産業界を支援するという、クロノスの重要な役割を果たします」

SYCL 1.2.1アドプター・パッケージは、アドプターがクロノスのSYCLワーキング・グループにテスト結果を送る前に、自身でそのインプリメンテーションを確認できる、クロノス初のコンフォーマンス・テストです。アドプター・テストが承認されると、クロノスは彼らの製品にSYCL準拠の認証をはじめ、そのインプリメンテーションに対してSYCLの名称とロゴをロイヤリティ無料のライセンスとして提供します。これは、クロノスのIPフレームワークを保護すると同時に、クロノス・グループが提供するマーケティング・プロモーションの活用を提供するものです。

CodeplayでCEOを務めるアンドリュー・リチャーズ(Andrew Richards)氏は、次のようにコメントしています。「デベロッパーは、自身のC++コードを並列プロセッサーにポーティングするためにSYCLを使用することに、大いなる自信を得ることとなりました。これによって、異なるデバイスとベンダー間での実用的なポーティング並びに、業界全体でデベロッパーによるSYCLベースのソフトウェアに対する投資が増えることでしょう」

SYCL 1.2.1について

OpenCL 1.2に基づくSYCL 1.2.1は、完全な標準C++を使用することで、ヘテロジニアスな並列プロセッサー用コードを「シングルソース」スタイルで記述可能とします。SYCL 1.2.1は、アプリケーションのホストコードとカーネルコードを同じソースファイルに、型安全な方法で、クロスプラットフォームの非同期タスク・グラフの単純さで含めることができます。マルチ・ベンダー対応でロイヤリティ無料の標準仕様であるSYCL 1.2.1は、機械学習の加速化やセーフティ・クリティカルな市場での並列プロセッシングのプロモーション、さらにはヘテロジニアスな並列プログラミングをサポートするC++ ISO標準の推奨という、クロノスの活動を強化します。クロノス・ワーキング・グループの継続的な活動を通して、SYCL 1.2.1はOpenGL®, Vulkan®, OpenVX™及びDirectXを含む他のベンダーのAPIと相互運用することができます。

Khronos Group(クロノス・グループ)について

The Khronos Groupは、さまざまなプラットフォームやデバイス上で並列コンピューティング、グラフィックス、ビジョン、センサー・プロセッシング、ダイナミック・メディアのオーサリング及び高速化を可能とする、オープンな業界標準の仕様策定を行うコンソーシアムです。クロノスが仕様策定する業界標準にはVulkan®、OpenGL®、OpenGL®ES、OpenGL®SC、WebGL™、SPIR-V™、OpenCL™、SYCL™、OpenVX™、NNEF™、COLLADA™、OpenXR™、glTF™などがあります。クロノスの会員は各仕様の策定作業に参画し、一般公開前のさまざまな過程で仕様策定に関する投票を行うことができるほか、仕様のドラフトへのアーリーアクセスならびにコンフォーマンス・テストを通して、自身のプラットフォームやアプリケーション開発の期間短縮や機能強化に役立てることができます。

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